研究課題
萌芽研究
バイスタンダー効果は、放射線被ばくした細胞から、放射線を被ばくしていない細胞に被ばくの影響が及ぶ現象であり、時間を隔てて放射線の影響が伝搬する現象であるが、現時点では、これらの現象がどのようなメカニズムで生ずるか明らかにされていない。しかし、バイスタンダー効果は、集団の中の一つの細胞にcGyレベルの低線量放射線を照射した際にも顕著に現れるので、低線量放射線の生体影響を評価する上で注意を払わねばならない。平成18年度の研究成果から被ばく細胞と非被ばく細胞が接触していなくてもバイスタンダー効果が現れるので被ばく細胞から培養液中にバイスタンダー因子が放出されていることが明らかとなった。加えて、こうしたバイスタンダー効果は、照射後、数時間から数十時間継続して生ずるので、バイスタンダー効果を媒介する伝達因子は、長期間培地中で安定である可能性が高い。そこで、被ばく細胞からバイスタンダー効果を媒介する因子が培養液に放出されるか否か、その因子は培養液中でどの程度安定かを微小核細胞の誘導を指標に調べた。その結果、バイスタンダー効果による微小核の誘導、突然変異の誘導は、ビタミンC処理で効率よく抑制されるが、NOXの特異的阻害剤c-PTIOやヒドロキシラジカルの阻害剤DMSOによる処理ではこうした抑制は見られないことが明らかとなった。このことは、ビタミンCが効率よくスキャベンジできる、常温で20時間以上の半減期を持つ長寿命ラジカル(LLR)がバイスタンダー効果の媒介因子となっている可能性を示唆する。この、LLRは、システイン残基を持つタンパク質に生じたスルフィニルラジカル(R-CH2-SO・)が第一候補であることがわかった。
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