研究概要 |
本研究の目的は,微生物代謝を利用した安価で環境に優しい新たなグラウト(以下,バイオグラウトと呼ぶ)を開発し,バイオグラウトの注入前後における地盤(土および岩)の水理学・力学特性について評価を行うことである。最終年度である平成18年度はセメント物質としてシリカを対象とし,(1)イースト菌およびエタノールを用いたシリカコロイドのゲル化試験,(2)シリカコロイドを主成分とするバイオグラウトにより改良した砂質地盤の透水試験,(3)メタ珪酸ナトリウム水溶液のゲル化試験を実施した。 得られた主な知見をまとめると,以下に示すとおりである。 (1)シリカコロイドにイースト菌とグルコースを添加すると,シリカコロイドはゲル化する。 (2)シリカコロイドに高濃度のエタノールを添加すると,シリカコロイドはゲル化する。 (3)イースト菌によるシリカコロイドのゲル化には,グルコースの微生物代謝産物(二酸化炭素およびエタノール)と菌体細胞の双方が関与している。 (4)シリカコロイドを主成分とするバイオグラウトを用いた豊浦砂の改良試験および改良の前後における豊浦砂の透水試験を実施した結果,改良後の透水係数が改良前よりも約1桁低下した。 (5)メタ珪酸ナトリウム水溶液を用いたゲル/ゾル/ゲル法によるゲル化試験を実施した。具体的には,塩酸による中和で生じたメタ珪酸ナトリウム水溶液のゲルを機械的に撹拝することでゾルにし,その直後にグルコースを添加することで再ゲル化を抑制し,さらにイースト菌を添加することにより微生物代謝によるゲルを生じさせることができた。 (6)メタ珪酸ナトリウム水溶液を用いた直接ゲル法によるゲル化試験を実施した。具体的には,高いpH領域においても,イースト菌およびグルコースを添加したメタ珪酸ナトリウム水溶液がゲル化することが確認された。 以上,2年間の研究により,バイオグラウトの技術開発に関して見通しが得られた。
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