研究概要 |
石炭や都市ごみの燃焼排ガス中に含まれるppbレベルの単体水銀(Hg)は、2価水銀を経て最終的には食物連鎖により有機水銀として蓄積され、人体に悪影響を及ぼすことが懸念されているので、本研究では、燃焼排ガス中のHg蒸気を化学的に安定な化合物として固定化するための原理の構築を目指した。 塩素がHgと強い相互作用を持つことに着目し、高表面積の炭素物質表面に化学的に安定な有機塩素構造を創製できれば、この塩素とHgの反応によりHgCl_2として固定化できるものと期待された。 そこで、まず、純粋な炭素物質を作成するため、市販のフェノール樹脂(粒径0.3〜0.4mm)を高純度He中950℃で炭素化後、He希釈のO_2気流中500℃で賦活処理を施すことにより、表面積が1100m^2/gと大きく不純物を全く含まないホームメード活性炭(hmACと略)を調製した。次に、hmAC表面に塩素をドープするため、100ppm HCl/N_2中500℃で加熱したところ、HClは炭素と容易に反応し、塩素ドープ量は昇温脱離法で求めた炭素活性サイト数とともに直線的に増加することを見出した。また、このCl-hmACをX線光電子分光法で詳細に解析した結果、有機塩素の存在が明らかとなり、炭素表面を有機塩素で修飾できる方法の開発に成功した。さらに、岡山大学の協力のもとで、Hg蒸気を含む石炭燃焼排ガスの模擬ガス(Hg,4.9ppb ; CO_2,10%; O_2,5%; SO_2,490ppm ; H_2O,15%; N_2,バランスガス)を80℃に保持したCl-hmAC表面に流通したところ、Hg蒸気を捕集できることが判明した。Hg除去能の飛躍的向上を目指して、Cl-hmAC作成条件の最適化を図ることが今後の課題である。
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