研究概要 |
起源の異なる溶存有機物(DOM)を湖沼水(印旛沼)に添加した生分解実験を行った。暗所、25℃で10日間培養し、培養過程の試料から核酸を抽出し、芳香環開裂酵素機能遺伝子であるC230遺伝子を増幅するプライマーを用いてPCRを行った。C23O遺伝子が検出された試料から、クローンライブラリーを構築し、塩基配列・アミノ酸配列を解析した。 流入河川水DOMやアシ腐植質を添加した実験系で検出された2日後,10日後のC23O遺伝子について,クローンライブラリーを作成した。アミノ酸翻訳したところ,104種類のアミノ酸配列群が得られた。実験2日後のC23O遺伝子構成は,各実験系で明確に異なった。東部流入河川の鹿島川のDOMを添加した実験系では,Sphingomonas属などが有するC23O遺伝子に近縁な配列が50%近くを占めたのに対し,、西部流入河川の神崎川のDOMを添加じた実験系では,Ralstonia eutropha KN1株などが有するC23O遺伝子に近縁な配列が36%を占めた。アシ腐植質を添加した実験系では,Pseudomonas属などが有するC23O遺伝子に近縁な配列が全体の71%を占めた。10日後のC23O遺伝子構成は,2日後からさらに変化して,すべての実験系でRalstonia eutropha KN1株などのC23O遺伝子に近縁な配列群が優占した。この配列群は,系統解析により既存のC23O遺伝子の分類とは全く異なる新規のクラスターを形成した。特徴的なC23Oを有する細菌を単離することを試みたが、今回の実験系列からは目的の遺伝子を有する細菌は単離できなかった。 このような優占C23O遺伝子構成の変遷過程は,起源の異なるDOMの生分解過程を反映していると考えられ、C23O遺伝子のプロファイリングにより、湖沼細菌群集の応答特性という視点からDOMの特性評価ができた。
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