研究概要 |
本研究は、有機リン殺虫剤フェニトロチオンの分解に関与する複数の細菌が、どのように機能発現の上で連携しているかを多孔質体を用いた実験によりその空間的な機能発現の解析から明らかにすることを目的とした。当初予定した共同研究者の多胡が期間はじめに他組織へ移動したため、目的に向けてモデル解析によって複数種の細菌の協同過程を明らかにすることに手法を変更した。 (1)フェニトロチオン分解の第1段階に関わるSphingomonas sp.TFEEは中間代謝物3-メチル-4-ニトロフェノール(3M4N)を分解できない。(2)一方、3M4Nの分解活性を有するBurkholderia sp.MN1はフェニトロチオンそのものは分解できない。(3)3M4Nの分解産物であるメチルヒドロキノンは両者にとって有効な基質となる。よって両者は共存することが前提となる。本研究では共存条件を基質親和性から明らかにすることに成功した。 3種の基質濃度を[S_0(t)],[S_1(t)],[S_2(t)]とし、2種の細菌TFEE株[x_1(t)],MN1株[x_2(t)]の動態について微分方程式を立てた.並行して行った基質添加実験の結果を参考に,TFEE株のメチルヒドロキノンに対するK_S値はMN1株よりも小さく設定した。TFEE株によるフェニトロチオンの共代謝率βおよびMN1株の3M4N分配率γに着目し,それぞれを変化させた場合のシミュレーションと分岐解析により2種の動態を調べた.その結果,βが大きく,γが中程度であることが2種の共存に重要であることが明らかになった.また,βを大きくするほど共存を示すγの領域も大きくなった.したがって,フェニトロチオン分解系において2種は正の相関で相互依存し,共存すると推論した. 成果は、Mathematical study on synergistic biodegradationとしてまとめ、J.Theoretical Biologyへ投稿の予定である。
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