研究概要 |
好気性細菌Chromobacterium violaceum(以下C. violaceumと略す)はシアンの生成と分解を行うことができ,この能力を用いて廃棄物からのAu等有価金属の回収速度の向上を目指す研究を遂行してきた. 細菌が活発に活動してシアンを生成する過程で,培地内の酸素濃度が低下し,このことが電気化学的溶解反応と細菌のシアン生成に関係していると考えられたので,培養液中に酸素吹き込みを行ったところ酸素濃度の上昇とAu溶解速度の向上が図られた.さらに,培地成分を工夫し,グリシン添加YP複合培地を使用することによりシアン濃度の増加とAu溶解速度の向上がみられた.これらの手法により従来よりも3〜10倍程度の高い溶解濃度を得ることができるようになった. また,研究過程で,C. violaceumがシアン分解能力を持つことも確認できたので,Auをシアンにより溶解後に分解処理する手法についても検討した.その結果,生成シアン濃度を高くするためにいわゆる栄養成分を添加した培地を用いているので,シアン生成速度の向上がみられたが同一資金によるシアン分解速度は低下するようになる.このために,Au溶解後のシアン生成を抑制してシアン分解速度を向上する手法を種々検討した結果,グリシン添加YP複合培地に,グルタミン酸とグルコースを加えることでシアンの再生成を抑制し,効率よくシアン分解ができることがわかった.今後,本細菌を用いた【シアン生成→貴金属溶解と回収→シアン分解】の環境に優しい貴金属回収システムが構築できるクローズドループの開発への重要な基礎実験成果が得られた.
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