研究概要 |
本研究で明らかになったことは以下の通りである. 1)エスニック、マイノリティの子供に関する事件の政府調査報告書は,現在の言語教育政策にも影響を与えていることがわかった.いくつかの例を以下に示す.『バロック報告書』(1975)では,専門性に関わらず全ての学校教員は英語教育に力を注ぐことが強調され,『スワン報告書』(1985)では,バイリンガル学習者の取り出し教育,語学センターでの教育は人種差別であるとした.また『マクファーソン報告書』(1999)では,学校を含む組織的人種偏見について明らかになった. 2)1992年以降NALDIC(カリキュラムにおける言語発達学会)よって,付加言語としての英語(English as an Additional Lariguage:EAL)という概念が英国学校教育に定着した. 3)インクルージョン政策により,EAL児童・生徒はできる限り原学級で指導を行うことが求められ,担任とEAL専門家や支援者とのティーム・ティーチングが行われている.しかしティーム・ティーチングによる教育効果は期待できないことがわかった.また教育現場では,EAL児童と特別な教育ニーズがある児童との学び合いは意図的に計画実施されていたが,EAL児童と英語母語話者児童との学び合いは特に意識されてはいなかった. 4)「ナショナル・リテラシー・ストラテジー」のEAL児童のための手引き書や指導案を分析し,EAL児童の英語力を国語科教育を通してどのように高めていくことができるかという示唆が得られた.研究結果から,日本の多文化・多言語状況の学校教員に求められる資質が明らかになった.さらに国語科教育と日本語教育の統合的アプローチの開発の可能性を見いだすことができた.今後本研究の研究成果を,国語科教育と日本語教育の統合的教育アプローチの開発研究に繋げていきたい.
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