研究概要 |
前年度までの研究内容を踏まえて、明治期陸地測量部写真班の活動内容を、日本の編纂・刊行写真帖のなかに位置づけるために、通史的著作として『世界を見せた明治の写真帖(叢書・地球発見10)』(ナカニシヤ出版,2007年)を上梓し、特にその「2戦争が見せた世界」において、戦争と風景写真の関係について詳細に言及すると同時に、そのなかで陸地測量部写真班の活動についても概括的ながら一定の叙述を行うことができた。 但し、昨年度までの調査・研究が示しているように、陸地測量部に関する公文書類が行方不明によるリスクは避けがたく、二次資料からの概括的叙述にとどまった点は惜しまれるところであり、今後さらなる史料探索を継続したいと考えている。 一方、個別の写真帖に関する研究、特に府県写真帖についてはこれまでの関連研究費による研究と併せて、相当な成果をあげることができた。まず、前掲『世界を見せた明治の写真帖』において、その通史をはじめてまとめあげることができ、今後の地誌写真帖の研究に一つの目安を与えることができたと考えている。また、「明治・大正期における府県写真帖の成立」地方史研究333号,2008年(掲載決定)において、府県者真帖の刊行帖から明らかとなるアウトラインを示すことができた。また、「奈良県刊行の『府県写真帖』に関する考察」総合研究所所報(奈良大学)16,2008年,59〜71頁において奈良県帖の個別分析を展開し、刊行帖の総覧からは明らかにできない編纂過程の実態についても明らかにすることができた。今後は、来る第51回(平成20年度)歴史地理学会大会(於・宮城学院大学)で宮城県写真帖に関する個別分析を「1908年の宮城県行啓と写真帖編纂」報告する予定であり、また同様の分析を島根県や滋賀県についても実施し、今後継続的に分析し、逐次機会をみて発表してゆく予定である。
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