月1回程度のペースで研究会を開いて、関連する内外の先行研究を検討し、近代日本における「たしなみ型教養」についての理論枠組を設定する作業を行なった。その際、西欧モダンと伝統文化、教養文化と大衆文化との関連のなかで「たしなみ型教養」を位置づけると同時に、特に担い手としての女性の役割に注目してアプローチした。中心となる女学生文化と「たしなみ型教養」の関係については、戦前期における女学生の読書、稽古事、社交ネットワーク、同窓会活動などに関する資料及び調査の分析と考察を行ない、もうひとつの水脈としての「たしなみ型教養」の水脈を抽出しようとした。その結果については、稲垣恭子『女学校と女学生』(中公新書)、同「読書する女学生」(稲垣恭子編『子ども・学校・社会』世界思想社)の中にまとめた。 さらに、いくつかの個別テーマ(1910〜1920年代における文学者・芸術家の社会的ネットワーク、女学生文化と「たしなみ」文化、礼儀作法書における「たしなみ」概念の変遷、和装にみる「たしなみ」と女性文化など)を抽出し、各テーマについて報告・検討した。それについてはさらに進展させ、研究報告としてまとめる予定である。
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