研究概要 |
本研究におけるもっとも独創的な点は次の2点にある.すなわち19世紀以来の懸案である一般微分,もしくは差分,ガロア理論を構成することと,その理論を解析学の諸問題に応用して従来の言語では捉えられなかった事実を明解に分析することにある.最初の点に関しては1996年に研究代表者が新しい理論を堤案して以来い進展が続いてきた.2000年にフランスの数学者Malgrangeは研究代表者の理論に触発されて葉層の一般ガロア理論を提唱した.第2の点であるが一般ガロアの解析学への応用については,Malgrangeの理論は若いフランスの数学者のガロア理論への参入をうながし,この分野に当然期待されていた活気が出てきた.Guy Casaleによる一般差分ガロア理論の離散力学系の可積分性への応用,Godbillon-Vey列を使った難解な古典といわれていたDrachの理論の解読,第6Painleve方程式のPicard解のガロア群の計算,第1Painleve方程式のガロア群の計算などの成果をあげた.我々の理論とMalgrange理論とは同値であることを研究代表者は証明した.従って上記のCassaleの結果はすべて我々の理論でも成立する.しかし彼の証明はMalgrangeの理論がそうであるように解析的である.一方我々の理論は微分体の拡大の理論であり,代数的であるのが特徴である.代数的に扱えるものは代数的に処理することによりより一般的でより自然な一般論を構成するのが望ましいと言える.我々はその目標に向かって研究をすすめており,Godbillon-Vey列の理論,一般差分ガロア理論の代数的な構成に成功した.
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