研究概要 |
Ricci flowに有限時間で現れる時空の特異点の時空でのrescale極限はRicci flowの古代解(存在時間が過去に無限に伸びた解)であり,それは特異点情報をすべて持っている.Ricci flowは弱放物型の発展方程式だから,過去に無限に伸びた解の存在は解析的には奇跡である.幾何的にはきわめて特殊な条件下でないとこのような解は存在することができない.Einstein計量の存在から幾何的な情報を導出するための方法として古代解を使うというアイディアはHami1tonがRicci flowによる幾何化予想の研究で最初に導入し,始めて実装に成功したのはPerelmanである.Hami1ton/Perelmanの思想を正の四元数Kaehler空間のtwistor空間の自然な崩壊をRicci flowで実現して適用したのが本研究である.Twistor空間のEinstein計量(少なくとも2つ)のうちKaehler-Einstein計量をとりあげ,KE計量を中心とするRicci flow不安定セルの構成を試みた.正の四元数Kaehler空間の正規直交枠束のholonomy簡約上の動標構と接続形式のSp(1)部分を組み合わせてtwistor空間上のKE計量を含むRiemann計量の2パラメタ族で次の3つの性質を持つものを構成した.(1)この族に初期計量を持つRicci flow解はこの族に属する.(2)この族に初期計量を持つRicci flow解はすべて古代解である.(3)この族に初期計量とするRicci flow解は有限時間で崩壊し,それはtwistor束の2つの自然な崩壊を実現する.これによりtwistor空間の自然な崩壊とKE計量がRicci flow解でつながっていることが分かった.2つの崩壊のうち底空間が速く収縮するものを選んでBanso/ShiのRicci flow解の勾配評価を適用することにより,正の四元数Kaehler空間の曲率テンソルが平行になることが示される.これはLeBrun-Salamon予想への肯定的解決を与える.
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