研究概要 |
本申請課題では、超新星爆発同時に放出されたガス中でのダスト形成の問題を解明する目的で (1)制御された条件下で、酸素原子と固体炭素および固体ケイ素の反応実験を行い、ダストの蒸発 ・変性および分子生成の速度を測定する。 更には、星形成場所の高温領域や衝撃波中でのダストの安定性およびダストとガスの反応による分子生成速度を明らかにするために、 (2)原子H, C, O混合ガスと種々の固体の反応速度測定の実験技術の確立を目指す。 この目的で、以下の実験研究をおこなった。 (1)C(s)+O(g)→CO(g),およびSi(g)+O(g)→SiO(g)の反応速度を測定する実験を行った。高真空反応炉内に設置した反応容器の内部に、炭素またはシリコンの固体試料を挿入し、一定 温度・一定流量の原子酸素を一定時間導入した。生成したCOまたはSiOのガス分子を質量分析し、強度から補正計算によりそれらの分圧を決定した。これにより正味の反応速度を決定した。また、実験後固体試料を回収し、反応による質量欠損の測定も行った。前者と後者による反応速度の決定値は+/-30%以内での一致をみた。前者においては、反応容器内(高温)の存在分子の直接測定でないため、容器から噴出した後の原子分子反応によって分子の割合が若干変化することが予想された。また、質量分析におけるイオン化率の値が必ずしも正確に知れていないので、両者の値の差は主として前者の誤差に起因すると結論した。固体試料の反応面積を変えて数回の実験を行い、反応面積ゼロに外挿することにより、15000℃における正反応の絶対速度を決定した。これと正味の反応速度との差から逆反応の絶対速度も決定した。これを複数の異なる温度について決定すれば、正・逆両反応の活性化エネルギーが求まる。 (2)決定されたC(s)+O(g)→CO(g),およびSi(g)+O(g)→SiO(g)の正・逆反応速度をダストの核形成・成長の計算に組み込むためのソフトウェアを開発した。これにより超新星イジェクタにおけるダスト形成の実態が予測できる。 (3)大質量星形成場所の高温領域や衝撃波領域で生ずる高温の原子ガスとダストの反応を研究する目的で、H, C, O原子の混合ガスを濃度を制御してダストと反応させるシステムの開発を行った。
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