研究概要 |
本研究はマイクロピクセル電極を用いた粒子検出器μPICの増幅率向上を図るものである。μPICは京都大学の谷森グループが開発を進めてきたものであるが,本研究では電極配置や電場分布を変更することにより,より高い増幅率を得て高エネルギー実験に広く応用できる検出器を開発することを目指している。 今年度は,シミュレーション結果に基づいてポリイミド基板上に300μmピッチで直径50μmの陽極を三角格子状に並べたマイクロピクセル電極μPICを試作した。これに電圧供給用および信号読み出し用に製作した回路基板を取り付け,データ収集システムを構築してμPICの基本特性を測定した。 μPIC本体の絶対増幅率を算出するために,まずテストパルスを入力して測定システムの較正を行った。次に,55FeのX線源を用いて,今回試作したμPICに標準的な電圧をかけて,従来のμPICで得られていた増幅率が得られるかどうかの確認を行った。測定の結果,増幅率は従来のμPICと同等でありシミュレーションの結果とも矛盾しないことが確認できた。 現在はマイクロピクセル電極での放電のために標準的な電圧以上の高い電圧をかけることができず,これ以上の増幅率は得られていない。しかし,陽極-陰極間電圧およびドリフト電圧を変化させて増幅率を測定したところ,シミュレーションで予想された傾向と一致することがわかり,放電対策を施せば所期の性能が期待できることが確認できた。 また,放電するピクセルの修理方法を確立し,今後更に高い増幅率を得るめどをたてることができた。
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