研究概要 |
【平成19年度の研究実績の概要】研究代表者1名が中心となり、研究支援者として2名の大学院学生と協力し研究を実施した。研究支援者として中心的役割を期待された大学院学生が都合により、本学を平成19年9月末から休学したことにより、本年度交付決定時の計画から若干の変更が必要となった。本年度の研究実績・実施状況は以下の通りである。 [1]量子ドット系のアンダーソン模型に対し、具体的に電子相互作用系における等エネルギー面の場の理論における場の演算子を構成し、ハーシュフィールドらが非平衡定常状態の議論に導入した準粒子場(=散乱状態演算子)と比較を行なった。その結果、両者が等価であることが示され、等エネルギー面上の場の理論が相互作用を持つ系にも拡張可能とわかった。[2]ウェグナーのフロー方程式による繰り込み群の手法と[1]の議論を合わせると(非平衡定常状態であっても)アンダーソン模型では繰り込み前後のハミルトニアンは一種の散乱問題と考えることができ、リウヴィユ演算子によるリップマン・シューウィンガー方程式により結びつくことがわかった。これは特に、非平衡定常状態の熱力学の構築に重要な知見と思われる。[3]スピン軌道相互作用系を持つABリング系に対して、横磁場を用いた量子位相効果を用いた量子スピン輸送の制御可能性に関して解析を行った。[4]ホールドープ一次元不純物電子相互作用系(アンダーソン・ババード模型)において、密度行列繰り込み群の手法を用いてアンダーソン絶縁体とモット絶縁体の間の量子相転移もしくは乗り移りを数値的に調べた。その結果、不純物がモット絶縁体を誘起する特異な領域があることを示した(原研奥村氏らとの共同研究)。[1-3]に関しては論文準備中、[4]についてはPhys, Rev. Lett.誌へ論文投稿済である。
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