研究概要 |
前年度までの研究により,ゾウリムシは多様な環境要因に対し,敏感な応答を示すことが明らかになってきた.特に,複数のゾウリムシが相互作用することによる,ゾウリムシ間の相互作用の解明が,外来の環境刺激への応答性を解析する上で,必要不可欠であることが分かった.そこで私たちは,細長いチューブ状のリングの中にゾウリムシを入れ,その行動を解析した.この環境は,一次元的な周期境界条件下でのゾウリムシの行動解析を可能とするものである.この設定により,ゾウリムシは,ある一定の臨界密度以上になると,外来の刺激無しでも自発的に集合を始めることが明らかになった.ゾウリムシが密集している領域では,ゾウリムシは典型的な集団的運動を示すことが分かった.私たちは,ゾウリムシの速度分布や遊泳方向の転換頻度を調べることにより,ゾウリムシの転換頻度の制御がゾウリムシの密集状態を安定させること,及び速度の加速が密集の不安定性の引き金になることを明らかにした.これら2つの競合する効果が,集団的運動の自発的ダイナミックスを説明するために有用と思われる.私たちは,遊泳する細胞の集団的運動に内在するメカニズムを明らかにするために,確率論的モデルを提案した。
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