研究課題
萌芽研究
地震発生の物理の核心部の一つである既存の摩擦構成則(すべり弱化則とすべり速度・状態依存則)には摩擦熱の効果が考慮されていない。他方、摩擦溶融は天然の地震断層でも地震を模擬した摩擦すべり実験でも起こる。本研究計画の目的は、摩擦発熱の効果を取り込んだ構成則を確立することである。溶融層が形成された後の摩擦すべり挙動は、数値シミュレーションで比較的容易に検討することができるので、本研究では、摩擦熱の効果が無視できるゆっくりした震源核形成過程と溶融層形成(full melting)との遷移過程であるflash meltingの過程を研究した。研究は主にガス圧式変形試験機を用いた固着すべり実験で行った。研究の結果は以下のように要約される。(1)鏡面仕上げした岩石試料表面の初期摩擦抵抗は凹凸の乗り上げ・破断ではなく、凝着である。(2)一旦凝着部が破断された途端にガウジが形成され、これらがアスペリティーとなって人参状のグループが彫りこまれる。これがその後の摩擦抵抗の原因である。(3)すべりの進行とともにガウジが次々と生成されるため、対向する双方のすべり面にほぼ同じ長さのグループが形成されるので、従来のflash meltingの理論は修正されなければならない。(4)封圧180Maでは、摩擦面とガウジは約100μmのすべり距離でflash meltingを開始する。以後、flash meltingは、線状グループに沿うガウジ層とプレカット面に集中して発達する。(5)ガウジの生成とflash meltingを伴うグループは、すべりとともに他のグループと合体し、真の接触面はすべり距離に比例して増加する。(6)これらの真の接触状態の変化を考慮すると、すべり距離と速度に強く依存するflash meltingのすべり不安定性が導かれた。(7)なお、台湾集集地震を起こした車龍埔断層にも溶融が起こったことを明らかにした。
すべて 2006 2005
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