研究概要 |
本研究では,二酸化酸素の深部帯水層中への地下貯留を実現するための基礎研究をおこなった.地下深部の流体移動を定量的に解析するためには,まず地下浸透率構造を知る必要がある.また,貯留できる二酸化炭素の量を見積もるためには,地下水の量を知る必要があり,そのためには地下間隙率構造を見積もり,地下水の総量から溶存可能なガスの量を正確に見積もる必要がある.本研究では,地表で採取した試料のを水理学的性質を地下深部条件下で測定することによって地下浸透率・間隙率構造を推定し,長期的なセメンテーションの影響については,時代が異なる堆積物の水理学的性質を測定することで経験的に評価した.このような方法で,新潟平野,台湾北西部,宮崎平野および三浦半島の第三紀層と第四紀層などで地下浸透率・間隙率構造を求めることができた.我が国初の二酸化炭素地下貯留実験サイトである新潟平野で,実験サイトの地下浸透率・間隙率構造を決めることができ,注入深度(約1km)では間隙率も大きく(約50%),流体も通りやすい(浸透率〜10^<-15>m^2)ことがわかった.これらの成果は,数編の論文として現在査読,改訂または執筆中である.地下の流体挙動を解析する際には,断層破砕帯の影響を考慮する必要がある.本研究では,下記研究発表論文の通り,英国の研究者と共同で内陸最大の断層である中央構造線の内部構造を調べた.また韓国・イタリアの研究者と共同で,大地震発生時の断層運動を再現して内部構造の変化を調べた.さらに,新潟平野の第四紀層中に形成された片貝断層帯の浸透率構造を調べた.その結果,母岩よりも遙かに流体を通しやすい基盤岩中の断層破砕帯に比べると,多孔質堆積岩中の片貝断層帯はほぼ母岩と同じ浸透率をもち,断層帯が必ずしも流体の通路にならないことが明らかになった.堆積岩中の断層帯の露頭は限られており,今後ボーリングなどを活用してより詳しい研究が必要である.浸透率構造を水と二酸化炭素の二相流に拡張すること,断層帯も含めたより現実的な浸透率・間隙率構造を使って地下深部の流体移動を解析することが今後の課題である.
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