研究概要 |
ジルコン結晶中に含まれるウラニウム含有量をレーザーアブレーションICP質量分析法で測定し,自発トラックを係数することによってジルコンの年代測定を試みた.分析にあたっては,島根大学の193nmエキシマーレーザーアブレーション装置を用い,質量分析装置は同じく島根大学のVGPQ3型装置を用いた.分析クレーター径は50ミクロンで,分析深度は2-3ミクロンである.この分析深度は結晶表面におけるフィッショントラックが発生する深度であり,分析深さ方向のウラニウム濃度の不均一についてはこの方法で矛盾なく測定することができる.この方法を用いると,平面的に均質にウラニウムが分布する結晶については測定誤差2-3%で年代決定することが出来ることが分かった.しかし平面的に不均一な結晶については質量分析とトラック係数を行う分析領域が正確に重複していない場合,分析誤差で10%程度が生じることが明らかになった.この問題は,分析範囲を広くとることによって,面積の増大とともに誤差を小さくすることが可能である.分析に当たって用いた標準試料は,ベトナム産火成岩中の捕獲結晶ジルコンであり,平均100ppmのウラニウム濃度でほぼ均質である.しかし,絨毯爆撃的に元素濃度の分布を検討したところ,およそ10%の濃度差があることが分かった.この問題は,グリッド分析を行って平均的な組成マップを作成し,そのマップに応じて標準物質の濃度を変えることで解決することが出来る.以上の手法を用いると,十分実用に足るフィッショントラック年代測定を行うことができる事がわかった.
|