研究概要 |
振動数ωの分子振動がある場合、縮退四光波混合の一種である3パルスフォトンエコー(3PPE)において、パルス1と3の時間差t_<13>を振動周期に同調させると振動の強度が弱まり、t_<13>を振動周期から半周期ずらすとt_<13>=0fsに比べて強度が強くなることを、既に論文(Y.Nagasawa, et al.,J.Phys.Chem.B109,11946-11952(2005))として発表している。当研究室で開発したフェムト秒Cr:forsteriteレーザーの第二高調波を使用し、色素オキサジン4(OX4)をドープしたポリビニルアルコール(PVA)のフィルムを10Kに冷却して3PPEの実験を行った。その結果、t_<13>を約50fsに設定すると、t_<13>=0fsの時に比べて、300cm^<-1>付近の振動の振幅が増幅されるということがわかった。このt_<13>=50fsという値は、これらの振動の約半周期に相当し、3PPEがコヒーレントな分子振動の増幅に応用できることが示された。また、t_<13>=100fsまで遅延すると、30cm^<-1>付近に非常に強くPVAのフォノンモードが出現した。 さらに今年度は研究を進め、OX4以外の色素(オキサジン170、オキサジン1、ローダミン700、スチリル6)についても同様な実験を行った。その結果、PVAのフォノンモードとのカップリングが強い系においては増幅が起こらないことを見出した。さらに我々は液体用の真空セルを開発し、10Kの1-プロパノールガラス中のNK-2990というシアニン色素についても同様な実験を行った。その結果、この色素の165cm^<-1>の強いモードは振動の1/4周期に相当するt_<13>=60fs付近で強度が最大になることを見出した。
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