研究概要 |
共振器を用いた光解離ミリ波ジェット分光装置を製作し、環境大気中や反応中間体として重要なラジカル及び分子錯体の検出を行なった。具体的には、 1.パルスノズルに取り付けた円筒の中にエキシマーレーザー光を集光し、紫外光レーザー光解離反応によって、超音速ジェット中にラジカル種及びラジカル錯体を生成した。超音速ジェット中に生成したラジカルは、極低温に冷却されて振動基底状態の低い回転量子状態に分布する。 2.真空セル内にホワイト型多重反射光学系を設置し、超音速ジェットの噴出の直下に、検出用のミリ波を約20往復させて集光し、検出感度の向上を計った。また、時間分解分光法を用いて紫外光レーザー照射直後の10-100μ秒間にのみ寿命を持つ反応性の高い短寿命分子種を、高感度に検出する分光法の開発を行った。 3.後進行波管を用いた電波源を開発して、測定領域をミリ波(30-300GHz)領域からサブミリ波(300-900GHz)領域まで拡大した。これにより、低振動の分子間振動を持つ分子錯体の分子間伸縮振動および分子内回転遷移の観測が可能となった。 以上の超音速ジェットサブミリ波・紫外光レーザー解離分光器を用いて、次の重要な短寿命種を検出し、それらの電子構造、および分子構造の決定した。 塩化ビニルを紫外光解離しビニルラジカルを生成し、トンネル効果によるプロトンの移動に伴う遷移を観測した。これにより、ビニルラジカルのプロトン移動のポテンシャル曲面を決定した。また、遷移金属とCOやNO分子との配位錯体(CoCO,CoNO,FeCOなど)の回転遷移を観測し、特異な電子状態を解明した。次に、超音速ジェット中に生成する弱い結合を持った分子錯体(HeHCN,H_2HCN,NeHCN)の内部回転遷移を観測して、分子間ポテンシャルを解析した。
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