研究概要 |
2005年度は走査型電子顕微鏡を用いて,粒径10nmオーダーの粒子をイメージングする方法を開発し,X線吸収分光法を応用して,酸化チタン・エアロゾル粒子に対して,ルチル構造かアナターゼ構造かという結晶構造を見分ける方法を開発した.同時に発光X線を用いることにより微粒子の元素組成の違いを見分ける方法を開発した. 2006年度は上記の方法を発展させて,自動車排ガス,水素吸蔵合金へ応用したり,前年度の酸化チタン光触媒の分析を通じて,人工皮膚や植物の葉に付着させた光触媒の兼備分析を行い,リスク評価を行った. 電子ビームを用いるSEMのバックグラウンドX線スペクトルの絶対強度とそのスペクトル分布を表す式を2005年度に導出したが,2006年度はこれをシンクロトロン放射光に対しても応用し,シンクロトロン放射光が相対論的な電子の制動放射であるとして放射光スペクトルの説明できることを示した.シンクロトロン放射光でも,理論式と実験結果の間の一致が極めてよいことを見出した.これにより,研究者らが提案した理論式の正しいことと,その応用可能性の広さを示すことができた. このように本研究では,空間分解能が極めて高い分析方によって,微粒子の化学状態,幾何学構造,元素組成を計測する方法を開発すると同時に,スペクトル・バックグラウンドの理論的な研究を行うと言う基礎研究を行い,合わせて,自動車排ガス,触媒粒子,合金が粉末化した試料中の金属の拡散など,環境試料や工業材料への応用も同時に進め,6件の論文と1件の解説を2006年度に出版することができた.
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