研究概要 |
落下塔施設を利用した微重力の環境で液中アーク放電によるカーボンナノ材料を合成するための装置を用いて単層カーボンナノチューブの合成実験を行った。同装置は落下カプセルに設置可能な形態にしており,微重力を感知すると所定時間の後に放電を開始するようになっており,放電時間を変えて実験できるようになっている。無重量研究センター(土岐市)において同装置を用いて,放電時間やカーボン,電極中の。ッケル濃度を変えた水中アーク実験を行った。実験により得た生成物の分析により,水中アーク放電場を無重力状態にすると,合成した単層カーボンナノチューブは比較的構造が揃い,また半導体性を持つナノチューブの濃度が増加することが分かった。この原因は,反応場の熱流動が安定する他,アークで生じる気泡径が大きくなることにより炭素蒸気の冷却が遅くなるからであると考えられる。ガス中アークを無重力状態にするとナノチューブの径が変化するという報告は過去にあるが,半導体性のナノチューブの濃度が変化するという報告は未だ無いので,今回の結果は新しい重要な知見である。また,それぞれの放電実験において発光分析も行い,放電で生じるラジカル種の解析のためのデータも採取した。さらに,放電実験において気泡の発生・成長め過程を高速度で画像データを採取し,反応機構の考察に用いた。気泡内の流動状態や気液界面付近におけるガス発生など,今まで観測されたことがない新しい現象が存在する可能性かおることがわかった。これらの解析は今進行中である。
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