研究概要 |
1.ナノ・スケール流路におけ拡散型モデルの構築 近年のマイクロ・ナノテクノロジーの発展に伴い,気体分子の表面拡散やナノスケールの超微細構造内での気体分子の流れの解明が重要な研究課題になっている.本研究では,壁面を構成する分子のポテンシャルによって壁面近傍に捕捉された気体分子の運動を,気体分子と固体フォノンの相互作用をボルツマン型の衝突積分で表した運動論的モデルをもとに調べている.平成19年度には,これまで断片的に得られていた結果を統合し,ボルツマン型方程式をもとに,物理的な仮定を順次導入することによって,メゾスコピックモデル,拡散型モデルからなるモデルの階層構造を構築した.メゾスコピックモデルから(気体の密度分布に対する)拡散型モデルの導出には,多重スケール法(均質化法)を用いた. 2.マイクロスケール気体流に対する拡散型モデルの構築 マイクロスケールにおける気体では,流路壁に沿って空間的温度変化があると気体の流れが起こる(熱ほふく流,熱遷移流).本研究では,この現象を利用した非機械式マイクロポンプ(クヌーセン型ポンプ)のモデリングとシミュレーションを行っている.平成17年度には,流路幅が流路の形状変化や温度変化のスケールに比べて小さいとして,流路内の気体の密度(あるいは圧力)分布を記述する移流拡散型モデルを導出したが,その際示した具体例は,2次元流路に対するもののみであった.平成19年度には,流路が円管である場合にもこの移流拡散型モデルが応用できるように,拡散係数のデータベースを整備するとともに,これを用いて太い円管と細い円管を交互に多数つないだクヌーセンポンプ内の気体の挙動を解明した.また,上述の移流拡散型モデルを,多原子分子気体に対して拡張した.ここでは,そのもととなるボルツマン方程式として,多原子分子気体に対するESモデルを用いた.
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