研究概要 |
本研究は,現在,非常に困難と言われている難削材(焼入ダイス工具鋼,ステンレス鋼,チタニウム合金等)の超精密切削加工に,超長寿命切削加工が可能な切れ刃運動型切削加工法を適用し,大型の超精密金型や金属反射レンズ等を始めとする,超精密機器用の「キーパーツ」の加工技術開発につなげることを目標として行った.切れ刃運動型切削加工技術は,最近,本研究申請者によるモータ内蔵型バイトシャンクの開発が行われ,S45Cの旋削加工で,従来の50倍以上の超長寿命切削が可能と確認されたものである. 主な結果を以下に示す. 1.ナノメータ精度切れ刃運動型用切削加工システムの設計試作 (1)高精度刃先チップ運動用シャンクの製作 ナノメータオーダの超精密切削加工を工具回転型切削法で行うには,工具先端のナノメータオーダ精度の回転機構が必要である.既存精密機器の軸受け機構を用いて,試作したが,ナノメータオーダ精度の回転機構には到達し得ず,サブミクロン精度で留まり,今後の検討となった. (2)回転チップ刃先の回転精度修正用装置の設計製作 超精密切削加工を行うためには,バイトチップ刃先を超高精度で回転させる必要がある.このために,チップをシャンクに取付け後に,研削砥石の目直し装置のように加工修正することが出来る回転精度修正装置を設計試作し,非常に高平滑で,刃先の鋭い丸駒型超硬合金チップの試作に成功した. (3)チップ刃先の回転・揺動速度制御用システムの製作 切れ刃運動型超精密切削特性の検討には,広範囲な切れ刃の回転速度・揺動速度で行う必要がある.市販のモータとその制御システムを用いて,回転数を広範囲に変える制御システムの製作に成功した. 2.試作したシャンクを用いた超精密切削加工特性の検討 (1)試作した刃先運動用シャンクの回転精度が充分でなかったため,刃先運動型超平滑切削では,数10ナノメータオーダの超平滑切削は成功し得なかった. (2)試作回転精度修正用装置で製作した.高精度丸駒型超硬チップを用いて固定型切削で,ステンレス鋼の切削を行った結果,70nm(Rz)以下の高平滑面が得られた。
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