研究概要 |
本研究では,低密度領域やマイクロ・ナノデバイス中の流れ場に代表される高クヌッセン数領域において適用可能な感圧・感温塗料(PSP・TSP)を実現するため,単分子膜(LB膜)の生成技術を応用した高秩序ナノ薄膜PSPの開発を行った.PSPでは,光励起した発光分子の酸素分子による消光を利用して酸素圧力を測定する.従来のPSPではポルフィリンの金属錯体が発光分子として広く用いられてきたが,LB膜の成膜には両親媒性を持つ物質を用いる必要があるため,本研究では両親媒性を持つメゾポルフィリンの金属錯体を発光分子として採用し,さらに発光分子同士の濃度消光を防ぐためにアラキジン酸を添加してLB膜の成膜を行うことにより,高秩序ナノ薄膜PSPの開発に成功した.さらに,パラジウムや白金などメゾポルフィリンの中心金属により圧力感度が大きく変化することを示し,それぞれの発光分子に対して圧力計測に最適な圧力範囲条件を明らかにした. 本研究で開発した高秩序ナノ薄膜PSPでは,膜中に含まれる発光分子の絶対数が非常に少ないため,発光強度の増加およびそれに伴う圧力感度の向上を目指すには,発光分子を効率よく励起する手法が要求される.発光分子の励起に,金属や半導体の微粒子周りに定在し光電場を増幅させる効果を持つ表面プラズモンを利用することで,高秩序ナノ薄膜PSPの励起効率を高めることが可能となる.そこで,PSPの吸収波長の光を増幅させることが可能な銀微粒子周りの表面プラズモンを利用して,高秩序ナノ薄膜PSPの発光強度を高める手法を開発した.その結果,表面プラズモンを利用しない場合に比べて発光強度を2倍程度に増幅させることに成功した.一方,発光強度の比で表される圧力感度は表面プラズモンを利用しない場合と同程度であり,発光強度の増加が圧力感度の向上には直接っながらなかったが,圧力計測におけるSN比の向上を実現できた.
|