研究概要 |
乱流の直接数値計算(DNS)は実験に換わる乱流の解析手法として使用され始めているが,必要な格子点数がN〜O(Re^<9/4>)となるためその適用範囲は厳しく制限される.しかし,この制限は空間が均一な乱流で埋め尽くされている場合の条件であり,間欠性を持つ高レイノルズ数乱流に対して非乱流部分の計算負荷を下げることで,N<O(Re^<9/4>)を達成する計算アルゴリズムを開発することが本研究の目的であった.そこで,まず流れ場を乱流と非乱流部に分離する方法について調査し,乱流の組織渦構造の抽出にしばしば用いられる速度勾配テノソルの第二不変量,圧力ヘシアン,渦度の絶対値の利用が有望なことがわかった.次に,本研究の目的に利用可能な空間離散化手法について調査し,解の空間変化を考慮しながら格子解像度を調整できる第二世代ウエーブレット法が有望であることがわかった.以上の計算アルゴリズム導入の基盤コードとして,まず平板乱流境界層のDNSコードを作成した.この基盤コードは空間的に差分法,時間的には移流項に3次精度RK法,粘性項にCN法で構成されている.境界層の流入条件にはLundによる相似的周期境界条件,流出条件には対流境界条件を課している.なお,従来の平板乱流境界層のDNSコードでは質量保存則が十分に満足されないことが報告されているが,圧力の整合性条件を考慮した境界条件を導入することで,本研究では計算機の丸め誤差の程度まで質量保存則の満足度を向上させることに成功している.さらに運動量厚さに基づくレイノルズ数500の平板乱流境界層のDNSを実施し基盤コードの妥当性を確認した.その後,基盤コードへの第二世代ウエーブレット法法の導入を試みている.
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