研究分担者 |
水本 洋 鳥取大学, 工学部, 教授 (80108795)
北野 博也 鳥取大学, 医学部, 教授 (20153108)
片岡 英幸 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (00224436)
落合 義孝 鳥取大学, 工学部, 助手 (90032028)
安達 和彦 神戸大学, 工学部, 助教授 (30243322)
鈴木 豊彦 鳥取大学, 工学部, 教授 (60032273)
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研究概要 |
本研究は,当初の目標を,1.声帯振動が呼気流と連成した振動であることを明確にする.2.呼気流を考慮した声帯振動モデルを作成し,実験と理論の両面から声帯振動および発声機構を解明するとともに,生体のダイナミクスを用いた医療診断への応用の可能性を探る.として開始した. そのために,延べ26人(男性21人,女性5人)の被験者に対して,自然な発声時の声帯直上での呼気流速変動の詳細な計測と,秒間2000コマでの高速度撮影による声帯振動の同時観察,さらに,口から放射される音圧の同時計測をおこなった.計測と撮影には経鼻的に挿入する医療用の喉頭内視鏡を用いた.呼気流速の計測には内視鏡の鉗子孔に挿入可能な超小型熱線流速計を開発し,さらに,秒間2000コマの高速度撮影を可能にするため,光源装置の光量を通常の3倍に増強する改良を実施した. これらの研究により得られた知見は以下の通りである. 1.声帯直上の呼気流は,声帯が開いている状態では流れ,閉じている時には流れていないとする従来の声帯振動モデルの仮定とは異なり,閉じている時も流れがあり,かつ,流速は開いている時よりも早くなっている. 2.声帯直上の呼気流速には従来の声帯振動モデルでは考えられていなかった高周波の変動成分が含まれている. 3.声帯直上の呼気流速変動と口から放射される音圧には強い相関がある. これらの知見は,従来より人の母音の音響的特性の説明に用いられている音源・フィルタ理論の平面音源の仮定では説明できない呼気流と連成した振動が声帯で起こっていることを明確に示す新たな知見である.当初目標とした医療診断への応用の可能性を探ることは実施できなかったが,音源・フィルタ理論では完全に無視されている呼気流を考慮した新たな声帯振動・発声モデルが発声機構の解明に不可欠であることを明らかにすることができた.
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