研究概要 |
本研究では,ロボットの動作をより自律的にするために,以下のことを目的とした.1)マイクロマシン技術により人間と同様に多数の素子を3次元的に分布させた触覚センサを作製する,2)各素子から得られる情報をニューラルネットワーク(以下NN)で処理して,汎化性に富み,ロバストな対象物との接触情報を得るための方法を検討する. 前記1)に関して,前年度開発したシリコンよりも人間の皮膚と同様に可撓性に富むPDMS(シリコンゴムの一種)製の触覚センサについて,マイクロマシニングプロセスの改良を行い,実際にアレイ型センサデバイスの作製に成功した.専用のCV変換アナログ回路を作製して,印加圧力に対する線形性,応答性について検討し,実際に分布荷重の測定に成功した. 前記2)に関して,前年度に引き続き有限要素法(FEM)を用いて人工皮膚に見たてたシリコンゴムの変形を解析し,その歪み分布を,水平・垂直方向に立体的に分布させた格子点(ここに触覚センサが配置されると仮定する)に割り付け,それらのデータをNNで処理した.力分布から,押し付けられた力の大きさ,力の方向,物体の形状,物体の姿勢(回転角度)を判定するNNをそれぞれ構築し,これらをモジュールとして統合した総合触覚判定システムを完成させた.また物体がセンサ表面を滑った場合に,力分布の時間推移から物体の凹凸,ヤング率,摩擦係数を判定するNNをそれぞれ構築し,これらを統合した動的な判定システムも完成させた.これは人間が対象物体のテクスチャ(ざらざら,すべすべ等)や硬さを検出できることを模擬したものである. 実デバイスの作製,NNによる認識シミュレーションともに一定の成果を得たが(ジャーナルペーパー掲載),それらを組み合わせた実システムの構築・評価については,主に時間的な制約から実現には至らなかった.本萌芽研究の成果を基に今後も研究を継続し,人間に匹敵する分布型触覚センサの真の完成を目指したい.
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