研究概要 |
従来の磁気浮上技術は,機械要素の代替となり得る程の十分な支持性能を目指しており,必然的に浮上時のギャップは狭く,漏れ磁束を低減し一定位置で安定となるよう設計されていた。本研究は,むしろ広い空隙距離,広い可動範囲を最優先するという逆転の発想に基づく磁気浮上技術であり,浮上体の三次元浮上移動を可能にする磁気浮上システムの開発を最終目的としている。 本年度は浮上体と2本のI型制御電磁石との距離を変化させる二次元磁気浮上移動システムを設計した。本申請内容において,三次元位置操作のための電磁石構成は,マトリクス状に配置された電磁石にバイアス磁束用永久磁石を設置し,磁極をN極,S極と交互に配置(市松模様)する方法を提案していた。また,浮上体には永久磁石球体を用い,浮上体側のバイアス磁束を利用する予定であった。しかしながら,ある1本の磁極から生じる磁束が近隣の磁極に流れ込む際に,浮上体の磁軸が傾斜し,移動量十回転角度を検出・制御するための検出系が必要となった。この現象は浮上体が軟磁性材料であっても残留磁化によって生じる磁極によって発生してしまう。そこで移動量のみを検出信号とするため,2本のI型電磁石の磁極(30mm間隔)に同極のバイアス磁束が発生するように永久磁石を設置し,浮上体に永久磁石球体を使用し浮上制御シミュレーションを実施した。また実機を製作し度重なる改良ののち二次元浮上移動状態を確認した。垂直方向と水平方向の2方向をレーザ式変位センサ(30mm幅レーザ)にて位置検出し,モデル追従型サーボ系による補償器で2方向独立制御により安定化を図った。レーザ式変位センサを用いる場合,浮上体形状にも制約があり,球形から円柱形永久磁石に変更し,垂直方向に11mm,水平方向に18mmの範囲の浮上移動(水平,垂直,斜め方向)を確認し,申請期間内に漸く三次元浮上移動システムの実現可能性を示すことができた。
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