研究概要 |
近年,接着性の向上や,印刷性能の向上などを狙った大気圧プラズマを用いた表面改質処理の研究開発が進められ,注目を集めている。このようなプロセスに広く用いられるプラズマ源(誘電体バリア放電や大気圧グロー放電)は,主にHeやArといった比較的高価な希ガスを使用するため,ランニングコストが高くなるという問題がある。そこで,動作ガスに空気を利用できるグライディングアーク(GA)に注目した。GAは,大気圧で発生するアークプラズマであるものの,室温〜数百度程度の温度を呈するメソプラズマである。本研究では,GAの実用化を目指し,低設備コストおよび低ランニングコストで大面積の表面処理を可能とする装置を開発するため,一つの電源で複数のGAを発生するシステムの開発を行った。加えて,トーチ構造の改良,特に電極の形状や材質の改良を進め,処理範囲の拡大や低損耗電極の開発を行った。 研究の結果,一つの電源から複数のGAを発生させるには,2つの方法が有効であるということがわかった。一つの方法は「枝回路化」である。この方法は,高電圧変圧器の二次側(高圧側)を複数に分岐し枝回路を設け,各枝回路に電極と直列にインダクタンスとキャパシタンスの直列回路を挿入し,各電極に高電圧を供給する方法である。もう一つの方法は「巻線の多相化」である。この方法は,高電圧変圧器の二次側巻線を複数設け,複数の高電圧出力を得る方法である。後者も前者と同様に電極と直列にインダクタンスとキャパシタンスの直列回路を挿入する必要がある。この度開発した電源システムを用い,一つの電源から12個のGAを発生させることに成功した。また,電極形状に関しては,広範囲にしかも均一にプラズマを照射できる電極形状を見出した。電極材質に関しては,Pt系合金を用いることで,電極の損耗を少なく抑えることがわかった。
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