研究課題
萌芽研究
平成17年度から平成18年度にわたり、走査ホール素子マグネトメトリを用いた電力用丸棒鋼材の非破壊磁気診断に関する研究を実施し、以下の成果を得た。丸棒鋼材の表面磁場垂直成分を、静的条件下(外部磁場ゼロ)で回転角θ及び長手座標Xの関数として計測・可視化し、X-θ座標軸上に磁気イメージとして表現する走査ホール素子マグネトメトリを製作した。これを用いて、SM400B丸棒鋼材の疲労進展が磁気イメージに及ぼす影響を研究した。疲労付加は軸荷重疲労試験と回転荷重疲労試験により行い、疲労状態の異なる2系列の試料を得たが、疲労進展に伴う磁気イメージの変化には試験方法の違いに拘らず強い類似性が確認された。初期状態の磁気イメージは横縞的な模様になるが、疲労の進展に伴って横縞的な模様から縦縞的な模様に変化し、加えて自発磁場の値も著しく低下することが判明した。光学顕微鏡による観測結果より、疲労付加試料の表面には円周方向に沿って多数のすべり線が観測されたため、この磁気イメージの変化はすべり線からの漏洩磁束に起因するものと考えられる。さらなる疲労付加により疲労亀裂が発生すると、亀裂部分からの漏洩磁束の影響によりその付近で等磁線の集中が生じる。しかし亀裂周辺の激しい磁場変化を除けば、全体的には亀裂発生に至る前のすべり線からの漏洩磁束の影響を残す磁場分布の特徴が依然として残っている。本研究により、疲労損傷の進展に伴い磁気イメージに顕著な変化が生じることが判明し、微細構造と磁気イメージとの間には何らかの相関性が示唆される。とくに、疲労損傷に伴うすべり線からの漏洩磁束の影響により初期状態の磁気イメージが変化すること、また亀裂が発生すると亀裂周辺からの漏洩磁束により等磁線の局所集中が生じることなどが判明した。亀裂発生前の予兆診断を可能にするためには、疲労損傷度と磁気イメージとの間の定量的な関係の構築が今後の課題となる。本研究のように、鋼材表面の磁気イメージを用いた非破壊診断の研究は国内外を問わず寡聞に等しく、鋼材の高信頼性の確保と社会保全に向けて材料科学分野に新地平を開拓できる可能性がある。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
「材料」 (J. Soc. Mat. Sci., Japan) 55巻8号
ページ: 798-798
平成18年度電気学会全国大会論文集 [2]
ページ: 150-150
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J.Soc.Mat.Sci.Japan 「材料」 54巻7号
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110006266578
Proc.of 12th Annual Int.Conf.on Composites/nano Engineering (Aug. 1-6, 2005, Tenerife)(Ed.David Hui) Session 9d (MAGNETIC 6) No.7
平成17年度電気関係学会東海支部連合大会講演論文集
ページ: 0-7