研究概要 |
本研究の目的は、強誘電体をゲート絶縁膜に用いて、従来素子よりも遙かに大きな電流を制御できる透明薄膜トランジスタを実現することである。本年度は、昨年度の基礎的な検討を踏まえ、素子を石英基板上に形成して透明薄膜トランジスタの試作し、特性を評価した。強誘電体には昨年同様に(Bi, La)_4Ti_3O_<12>(BLT)、チャネルには導電性酸化物のインジウム・スズ酸化物(ITO)を用いている。最初に、昨年度まで用いていたPt/Tiの金属電極に代わって、透明素子を作製するためにITOを電極材料としてトランジスタをSiO_2/Si基板上に作製したところ,オン電流0.5mA、オフ電流10^<-10>Aとオンオフ比10^6以上の良好なトランジスタ特性が得られた。特にオフ電流は、Pt/Ti電極を用いた場合と比較して3桁以上の顕著な低減が認められた。これは、ITOを下部電極として強誘電体を形成した場合には、Pt/Ti電極を用いた場合と比較して表面平坦性が改善されることが原因と考えられ、昨年度強誘電体を機械研磨して表面を平坦化した場合に小さなオフ電流が得られたことと同様の結果である。次に、ITOを電極として石英基板上に透明のITOチャネル強誘電体ゲートトランジスタを作製した。その結果、可視光領域で60-80%の透過率が得られた。またオン電流0.5mA、オフ電流10^<-10>A以下、オンオフ比10^6以上と、ほぼ目標とする電気的特性を達成できた。また不揮発性メモリとしても素子が機能することを確認し、1日以上のデータ保持特性を確認した。さらに、高誘電率材料のBi_<1.5>Zn_<1.0>Nb_<1.5>O_7をゲート絶縁膜に用いたITOチャネル薄膜トランジスタの検討も行い、良好なトランジスタ特性を得ている。
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