研究概要 |
スペクトル空間(周波数領域)における復調理論および具体的な復調方法を確立するため,最終の今年度は主にフェージングチャネルにおける復調方法,特に伝搬路推定方法について検討した. (1)前年度,周波数選択性により受信信号の周波数スペクトルが歪んだ場合でも,伝搬路特性を正確に推定できればスペクトル空間での復調が可能であることを示したが,受信信号のスペクトル空間において伝搬路特性を推定する問題が残されていた.これを解決するために,既知の方法であるがデータパケットの先頭に特定のユニークワードを付加して,受信ユニークワードの周波数スペクトルから伝達関数を推定することとした.ただし,次に示す新たな雑音対策を考案し,伝搬路の推定精度を向上させることができた.(a)推定した伝達関数を逆フーリエ変換し,インパルス応答を求める.(b)雑音電力を基準とするに適当な閾値を設定し,閾値以下の成分をゼロとする.(c)修正されたインパルス応答をスペクトル空間に変換し,MMSE基準によリデータ区間を等化する. (2)前年度の検討が不十分であったタイミング同期について,詳細なコンピュータシミュレーションを実施した.想定する正規化タイミング周波数オフセット10^<-4>に対し,キャリア同期と同じ手法をとるとプリアンブル数が2500ビット以上必要となる.実用上,データパケット中のプリアンブル数はできるだけ少ないことが望ましく,本手法の適用限界が明らかになった.現在,新たな手法を開発中である.
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