研究概要 |
本研究は,自然風における風向変動特性を再現することを目的とした風洞試験装置を試作し,装置が生成する気流の測定結果に基づき風向変動の制御方法に改良を加えることにより,自然風の風向変動特性を正確に再現し得る風洞の実現のめどをつけることを目的としている. 本年度は,コンピュータ制御されたリニアモーターでシャッターの開閉を行える装置を3台増設し,昨年度設置した分と合わせて計4個の風路の開閉を行えるようにした.シャッター開閉のタイミングをパラメータとして実験を繰り返し,安定した風速のままで風向変化を生じさせることのできるタイミングを明らかにした. また,風向を往復で変化させるケースについても検討したところ,最短で0.5秒間隔で風向を往復変化させることができた.しかし,こうした往復の風向変化のケースでは,定常的に生成される風向変化よりも大きな風向変化が瞬間的に生じるオーバーシュートが目立っ結果となった. 自然風データを分析し,4秒間に30°近い風向変化(U≒17m/s)と,40秒間程度で60°を超える風向変化(U=10〜16m/ls)の生じているケースをみつけた.こうした風向変化が,風向変動風洞における何秒に対応するかを相似則に基づいて検討したところ,ガス拡散の予測を想定すると,実現象の4秒は0.002秒,40秒は0.024秒に,風車の耐風性検討を想定すると,実現象の4秒は0.053秒,40秒は0.53秒と非常に短い時間に対応する.ただし,風向変動風洞のサイズを10倍にして,風速も高くすると,この時間は3〜10倍長くなる. 自然風の風向変動の試作した風向変動風洞による再現性の検討は,さらにコンピュータ制御のシャッターの数を増やして検討を進める必要があるが,0.5秒で往復の風向変化を概ね達成できていることから,対象とする現象のスケールが小さい場合は,概ね現象を再現する見込みがついたと考えられる.
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