研究概要 |
本研究では,地震に対して極めて脆弱な無補強組積造建築を効果的且つ経済的に高耐震化する技術を開発することを目的に,組積ユニットに凹凸を設けユニット同士の噛み合いを利用する新しい無補強組積構造の開発に取り組んでいる. 平成18年度は,前年度の研究成果を踏まえ,壁の面外方向への水平力抵抗機構を確保するように計画したインターロッキング型組積ユニットの性能について実験的に検証した.組積ユニットの形状(インターロッキング機構を発現するための凹凸の有無)および素材をパラメータとして,計3体の無補強組積造壁を製作し,静的な破壊実験を実施した.その結果,1)組積ユニットに凹凸加工を施す(インターロッキング機構を確保する)ことで,組積造壁の面外方向の耐力が大幅に向上すること,ただし,2)ユニットの素材として脆性材料(本実験ではれんが)を用いるとユニットそのものにひび割れが生じるとともに急激に耐力低下すること,3)上記はユニットの素材として靭性材料(本実験では繊維補強セメント複合材料)を適用することで解決でき,本ユニットによる組積造壁は面外方向の大きな変形(逆対称変形を受けた場合の部材角で1/25程度)に対してもインターロッキング機構を喪失しないこと,を確認した. また,本年度は前年度に実施した実験(インターロッキング機構の有無をパラメータとする2体のれんが造試験体の面内載荷実験)を対象に,FEM解析を実施して実験結果の再現性を検証した.解析では,れんが,目地モルタルの他,その境界面にインターフェースモデルを配することで,試験体をモデル化した.典型的な直方体形状のれんがを積み上げた従来型試験体では,最大耐力をほぼ再現でき,また,せん断破壊後に破壊面の摩擦により耐力を保持する現象も再現できた.ただし,壁面のひび割れパターンは実験と異なり,ひび割れが連続して一つの階段状にはならず複数に分散した.凹凸を設けたれんがにより製作した開発型試験体では,れんが間の噛み合い作用により耐力が高くなる現象を再現できた.実験値と比較して最大耐力がやや高めとなり,最大耐力以後の耐力低下率も大きくなったが,実験時の損傷状況はよく再現できた.FEM解析により,両試験体ともに比較的良好に実験結果を評価できた.
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