研究概要 |
本年度は,6価クロムを含む重金が固定化されるカルシウムアルミネート水和物であるエトリンガイト(Aft相)を多く生成する水硬性材料であるアーウィン(3CaO・3Al_2O_3・CaSO_4)を合成し,セメントに添加した固化材の6価クロム溶出抑制効果を検証した。アーウィンの合成は,研究代表者らの過去の研究から,製鋼過程でリンを除く段階で発生する脱リンスラグを有効利用する方法を採用した。脱リンスラグの中の遊離石灰(f-CaO)を利用しアルミナ分とセッコウ分を添加しアーウィンを合成するため,脱リンスラグ(DS)と酸化アルミニウム(3Al_2O_3:AL)及び硫酸カルシウム二水和物(CaSO_4・2H_2O:SO)の適正配合を検討した。理論配合は,質量比でDS:AL:SO=45:35:20となり,この配合で混合し加圧成型したものを1,150℃で3時間焼成した。この時に生成されたアーウィン(D55)を純薬合成したアーウィンの生成量と比較した結果より,さらにアーウィン生成量を増加させるため炭酸カルシウム(CaCO_3:CA)添加率を2種類変化させた合成を行なった。この時のアーウィンの配合はD25(配合比DS:CA:AL:SO=25:25:35:15),D10(DS:CA:AL:SO=10:40:35:15)とした。この合成したアーウィンD55,D25,D10のそれぞれと普通ボルトランドセメント(OPC)およびセッコウを混合して作製した固化材をHA55(OPC:SO:D55=50:3:15),HA25(OPC:SO:D25=50:3:15),HA10(OPC:SO:D10=50:3:15)とした。これらの固化材とOPCのみの固化材(PL)ならびにOPCを高炉水砕スラグ微粉末で50%置換しセッコウ(SO_3換算で5%)を添加した固化材(BSG5)についての6価クロム溶出抑制効果を砂質土,シルト,関東ロームで比較した。その結果,砂質土ではアーウィンを添加したHA10,その他の土壌では高炉スラグ微粉末を添加したBSG5が有効であることが認められたが,溶出抑制効果は土壌のアルカリ性と酸化還元電位が大きく影響することが認められた。
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