研究概要 |
エネルギーや環境分野ではイオン伝導体と混合伝導体が重要な材料であり、固体におけるイオンの移動現象が現代科学技術の中心的な課題の一つになっている。高温中性子回折法により、Ce_<0.93>Y_<0.07>O_<1.96>の核密度分布を調べた。室温では酸化物イオン(O^<2->)は螢石型構造の正規の位置(Fm3mの8c席)の近くに局在化している。一方、高温1434℃では酸化物イオンは大きく広がって、酸化物イオンの分布が隣の席の分布と連結している。酸化物イオンは陽イオンに比べて大きく広がり、隣の席と連結している。<100>方向に沿った拡散経路が観察された。また、<110>方向に沿った拡散経路も可能である。<110>方向に沿った拡散経路では、まず酸化物イオンが<111>方向に沿って変位してから、<100>方向に移動する。このような<111>方向への変位は、Bi_2O_3,Bi_<1.4>Yb_<0.6>O_3,CeO_2のような螢石型構造を有するイオン伝導体において見られる。一方、イオン伝導度が低い添加物を入れていない純CeO_2では拡散経路に対応する連結した密度分布は見られなかった。また、<100>に沿った拡散経路は螢石型酸化物イオン伝導体Bi_<1.4>Yb_<0.6>O_3と陽イオン(Cu^+)伝導体CuIでも観察された。したがって、イオンの拡散経路は、結晶構造に強く依存しており、同じ螢右型構造でかつ可動イオンの安定位置が8c席であれば、陽イオンや可動イオンの種類に依らず、同じ<111>方向への変位と<100>方向への拡散を示すと考えられる。
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