研究概要 |
筆者らは,ポリマーブレンド紡糸法を用いるカーボンナノファイバの調製法を開発した。この方法を用いて,微小金属担持カーボンナノファイバ調製の可能性を検討することが最初の目的で,この成果に基づいて,白金担持カーボンナノファイバ不織布を調製し,燃料電池用電極への用途展開を図ることが最終目的である。ナノファイバの調製法は確立しているので,本研究では,微小金属担持法について基礎的検討を行った。最初は,コバルトで陽イオン交換した市販のイオン交換樹脂をフェノール樹脂中に分散させ,1000℃で炭素化した。TEMにより,炭素中に均一に分散した10nm前後のコバルト微粒子が観察された。ついで,紡糸を念頭において,ポリアクリロニトリル(PAN)とポリアクリル酸(PMA)のコポリマー微粒子を調製し,PMA中の-COOHを利用して陽イオン交換反応により銀イオンを導入した。さらに微粒子の融着を防止するためにポリアクリル酸メチル(PMMA)で被覆した。被覆コポリマー粒子を不融化,最後に1000℃で炭素化した。その結果,10-20nmの銀粒子がカーボン粒子表面に均質に分散した。通常の浸漬法で担持した試料においては,40nm程度の銀粒子が不均一に分布した。陽イオン交換法が微小金属担持カーボンを作る上で有効なことを確認できたが,燃料電池用電極では数nmの金属粒子が要求されるので,さらなる検討が必要である。本実験結果から,コポリマー微粒子に陽イオン交換反応で白金を導入,PMMAで被覆後,紡糸,不融化,炭素化すれば微小白金粒子担持カーボンナノファイバが調製でき,えられたナノファイバを抄紙することで目標を達成できることを確認できた。
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