研究概要 |
本研究は,新しい色彩合金作製の礎として,Cu-GaおよびCu-Al固溶合金において,それらの色彩変化と電子構造(状態密度)変化の対応を明らかにすること,また,種々の合金元素(Mn, Fc, Rh, Ni, Pd, Pt, Zn, In, GeおよびSn)によるCuの色彩変化を状態密度から説明することを目的として行った。 色彩の定量化は,国際照明委員会表色系に基づいて行った。すなわち,分光光度計により試料の反射スペクトルを測定して三刺激値を算出し,これをx-y色度図上にプロットして評価した。また,状態密度計算は,DV-Xα分子軌道法を用いて,添加元素をランダムに配置した原子数55個のクラスターを対象として行った。 Cu-Ga合金の色彩は,Gaの添加とともに赤色(Cu)から橙色,そして黄色へと変化した。また,反射スペクトルでは,吸収端波長の約600nm(Cu)から550nm(Cu-15at%Ga)への移行が認められ,状態密度では,3dバンド位置の低エネルギー側への移行が認められた。これらの変化の方向は理論的に一致し,また色彩変化とも対応づけることができた。同様の結果はCu-Al合金についても得られた。 さらに,Cuに他の典型元素を8at%添加した場合にも,合金の色彩は燈色もしくは黄色となった。反射スペクトルの吸収端は,典型元素の価電子数が増加するにつれて短波長側へと移行した。すなわち,Cuより価電子数の多い典型元素を添加すると,フェルミエネルギー準位が上昇し、このため,反射スペクトルの吸収端が短波長側に移行し,色彩が変化したと考えられる。一方,Cuに遷移元素を8at%添加した場合は,いずれの合金も桃もしくは銀白色を呈した。遷移元素を添加した場合には,Cu 3d軌道と添加元素のd軌道の相互作用が起こるため,状態密度のCu 3dバンド位置や反射スペクトルの吸収端位置があまり変化しない。しかしながら,添加元素に帰属するdバンドが出現し,600nmより長波長域の光吸収が増し,その結果,長・短波長域の反射率の差が小さくなり,色を希釈したと考えられる。
|