研究概要 |
平成19年度は,昨年度に引き続き,真空チャンバ内での円形膜の回転実験において発生した振動の原因の解明と提案した振動モード解析の詳細な検証を行った.そのため,膜面に発生する振動を系統的に計測することとした.膜面には厚さ7.5pmのポリイミド膜と,厚さ12.5pmのポリエチレンテレフタレート膜の2種類を用い,直径は600mmと500mmとした.回転数を5Hz〜15Hz,真空チャンバの内圧を40〜1kPaの範囲で変化させ,膜面外周の面外振動を計測して周波数分析を行った.なお,外力による共振点を計測するために,膜面に磁性体薄膜を貼付して電磁石による強制励振実験を試みたが,磁力が弱く加振できなかった. 実験の結果,チャンバ内圧が高いほど回転数と異なる特定の振動ピークが顕著に現れ,内圧を低下させると振動振幅が減少し,回転数の整数倍のピークと同時に他の多数のピークが発生し,主要なピークが不明確となった.すなわち,実験で発生する振動は主に残留空気の影響によるもので,内圧によって振動モードや振動数が変化することがわかった.そのため実験結果と解析で得られた振動モードとを逐一対応づけることは困難だったが,最も基本的な振動モードである(0,0)モード(周方向波数0,半径方向波数0),(1,0)モード,および(2,0)モードの振動数について,回転数の高い範囲で実験結果と解析結果の問に整合性が確認された.また,実験に用いた円形膜においては,製作誤差による偏心や回転軸の微小な振れ周りが存在するが,それらの影響で振動が不安定となる現象は観察されず,基本的には安定であった. 本研究により,ソーラーセイルなどの遠心力展開される大型膜面構造物の初期検討のため,おおよその振動モードを理論解析や数値解析によって予測できるのではないかと考えられる.
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