研究課題/領域番号 |
17656281
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
船舶海洋工学
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
古澤 昌彦 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (60281002)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2006年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2005年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | イルカ / ソナー / 魚群探知機 / 反射強度のスペクトル / 魚種識別 / 高分解能 / 広帯域音波 / 散乱振幅 |
研究概要 |
イルカ類は餌となる魚を彼らの生物ソナーで探知し、識別した上で、補食しているので、彼らの魚群探知・識別能力は優れているものと考えられる。そこで彼らのソナーの優秀な対象識別能力を探り、人工の魚群探知機やソナーに適用したいと考え、研究を進めた。前年度は、イルカのソナー音を送受波出来る広帯域送受信システムを構築し、水槽において反射特性が明確にわかっている金属球の反射強度のスペクトル(反射の強さと色合いに相当)を測定し、理論と正確に合うことを確かめた上で、キンギョとマアジの反射強度のスペクトル測定に成功した。 本年度はまず、海において生きたマアジやイサキをテグスにつなぎ、イルカのソナー音によるエコーを得て、その特性を調べ、対象識別につながる情報を探った。反射強度のスペクトルは、魚種による違いだけでなく、遊泳姿勢や、個体間によってもかなり変動する。そこで、反射強度のスペクトルのみからでは、魚種識別はむずかしいが、その変動の特徴を類型化することにより識別情報が得られると考えられる。 次に、広帯域送受波器を鉛直下方に向け船の舷側に固定し、通常の魚群探知機と同じように、航走しながら、魚群探知実験を行い、通常の魚群探知機と比べて特徴ある魚群工コーを捉えることが出来た。第1に、自然状態の魚の反射のスペクトルが得られ、その変動が観察された。第2に、通常の魚群探知機では1ms(距離にして75cm)程度のパルス幅(音の継続時間)を用いるが、イルカのソナー音は0.05ms(距離にして4cm)程度と短いので、非常に距離分1解能の高いエコーが得られた。これにより、魚群内の1尾ずつのエコーが分離され観察されるので、魚群の内部構造1がわかり、1尾ごとの反射強度解析なども可能となることがわかった。第3に、一般に広帯域の短いパルスを用いると雑音に弱くなるが、特にバンドウイルカのソナー音の場合、相互相関処理により信号対雑音比を10倍以上大きくできることがわかった。彼らは、遠距離探知には、このような処理を脳内で行っている可能性がある。 水槽内や魚を懸垂しての実験では、魚がいる方向がわかるので、感度の補正が不要である。しかし、海上実験で自然の魚を対象とした場合これは不可能である。そこで、人間の両耳で方向を知るとほぼ同じ原理の、スプリットビーム法という方法を適用し、海上でも反射強度のスペクトルを知ることができるようにした。 イルカのソナー能力を真似て、反射強度のスペクトルとその変動、魚群内の高分解能観察、遠距離探知が可能なことが判明し、対象識別に道が開けた。
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