研究課題
萌芽研究
テトラヒメナは西洋梨型をした長さ50μmの繊毛虫である。テトラヒメナのカルモデュリンスーパーファミリー蛋白質であるTCBP-25遺伝子のノックダウン株の形態はほぼ球形になり、振とう培養するとほとんどの細胞が壊れてしまうほど弱くなった。また、ノックダウン株では収縮胞が膨潤しているのが観察された。正常細胞ではTCBP-25は繊毛基部を除く膜直下にあるエピプラズミックレイヤーに存在する。エピプラズミックレイヤーは微細な繊維構造からなり細胞の形態を維持している。また、TCBP-25が収縮胞の開口部を取り巻くようにリング状に局在することも分った。TCBP-25が収縮胞の開口部の調節を行っているとすると、TCBP-25ノックダウン株で細胞が丸くなり、壊れやすくなったことは次のように考えることができる。エピプラズミックレイヤーのTCBP-25が減少したため細胞形態維持が困難になり細胞は球状化する。同時に、収縮胞の開口を調節していたTCBP-25が減少したため、収縮胞からの水分の放出が滞り、収縮胞が膨潤して細胞の球形化はますますひどくなり、さらに膨圧が高くなり最終的には細胞は壊れる。この可能性を検証するため、TCBP-25と同じような局在を示す蛋白質を我々がテトラヒメナからクローーニングした数十種のタンパク質の中から、蛍光抗体法を用いて検証した。その結果、興味深いことにアクチンの重合を促進するフォルミン・ファミリーに属するBNI2がエピプラズミックレイヤーと収縮胞の開口部に局在することが分かった。BNI2は表層ではスイカの縞のように局在する。したがって、細胞表層を覆うエピプラズミックレイヤーにはBNI2が無くTCBP-25が存在する部分と両者が存在する部分(スイカの縞の部分に相当)があることが分った。また、収縮胞開口部には微小管からなるリング状構造とそれから放射状に延びる微小管が観察された。TCBP-25もBNI2もこのリング状構造に局在するが、放射状に延びる微小管には存在しなかった。BNI2とアクチン繊維との共局在は観察されなかったので、BNI2は微小管やTCBP-25と相互作用して収縮胞開口部の開閉や、TCBP-25とともにエピプラズミックレイヤーに局在して細胞の形態維持にかかわる可能性が示唆された。現在、BNI2の遺伝子KO株の作成を試み、細胞形態や収縮胞の働きに及ぼす影響を調べている。
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