研究概要 |
蛋白質の非特異的な凝集を防止するとともに安定性を向上させる低分子化合物やその使用法を開発し,構造生物学研究を推進することを本研究の目的とした.蛋白質が凝集すると質の良い結晶ができないだけでなく,溶液NMRの感度や分解能が著しく低下する.NDSB (non-detergent sulfobetain)という一群の化合物は蛋白質の凝集を防ぐ事が知られているので,NDSBのNMRや膜蛋白質の結晶化への応用を検討した. 1.NDSBの酵素活性への影響:NDSBが酵素活性や蛋白質・蛋白質相互作用を阻害すると立体構造解析には応用しにくい.そこで,NDSBが酵素活性等に及ぼす影響について調べた.調べた限りでは1Mの濃度でプロテアーゼ活性を50%阻害したのが最大で,その1例以外は,阻害は殆ど無視できた.そこで,NDSBは様々な蛋白質に応用できると期待される. 2.レセプター部分ペプチドとG蛋白質との相互作用の解析へのNDSBの応用:m4レセプターの部分ペプチドはGiを特異的に活性化できるので,m4レセプターの良い低分子モデルとなるが,Giと混ぜると沈殿してしまう問題があった.この系にNDSBを添加したところ,沈殿が防止でき,フリーのペプチドでは観測されなかったTRNOEシグナルが観測できるようになった. 3.NDSBの膜蛋白質への応用:膜蛋白質を結晶化するためには,膜蛋白質を高い効率で可溶化し,また,その可溶化物が安定である必要がある.NDSBは界面活性化剤依存的に膜天白質の可溶化や安定化を促進する事がわかった.
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