研究概要 |
【研究の目的】本研究課題では,環境刺激やテクノストレスに対する,ヒトの自律神経反応や適応能力の生理的多型性について研究するための新しい指標として,皮膚血流リズムの評価法を確立する.皮膚血流リズムとは,レーザードップラー皮膚血流計にて計測される0.1〜0.2Hz周期の変動であり,皮膚表面から簡便に計測できる. そこで本研究課題では,皮膚血流リズム発生のメカニズムに関する文献を整理し,メカニズムに基づく最適な計測部位の選定と,計測・解析法の構築を行う. 次に年齢,性別の異なる被験者を対象に,皮膚血流リズムの特徴(刺激に対する応答性の速さ,交感または副交感神経支配の優位性を明確にするために,基礎的な実験を行う.さらに従来指標(心拍変動,血圧など)との相関を検討し,ヒトの全身的な自律神経活動の状態を,定量的に評価するための手法を提案する. 【平成18年度の実績】平成17年度の研究結果から,皮膚血流リズムが自律神経活動の影響を受ける可能性が示唆された.そこで血流リズムの特徴をより詳細に検討するため,20〜30代の男女各11名の被験者(計22名,人材派遣にて対応)を対象に,姿勢変化(仰臥位,椅座位,立位),深呼吸,計算課題を行なわせ,以下の検討を行った. (1)皮膚血流リズムの計測に適した部位(前額面,耳朶,鼻尖部)の比較と,中心周波数の計測 ⇒前額面,耳朶にてリズムが明確に出現する場合が多く,その中心周波数は0.09〜0.2Hzの範囲である. (2)自律神経活動の従来法(心拍数心拍変動成分)と比較し,皮膚血流リズムの反応性を検討 ⇒交感神経活動を反映する心拍変動成分(LF/HF)は,仰臥位く立位間に有意な差を示し,皮膚血流リズムは,仰臥位>立位間に有意な差が見られ,交感神経活動の分解能としてはLF/HFと同等である可能性が得られた.ただし,皮膚血流量は仰臥位く椅座位く立位の順に多く,皮膚血流リズムが皮膚血流量の影響を受けた可能性があり,同等な血流量での検討が必要である. (3)皮膚血流リズムの出現率は男女間にて有意な差はなかったが,女性が若干高い傾向であった. なお研究遂行のために,被験者およびオペレータの人材派遣費用の追加,および連続血圧計のレンタルが必要となったため,主に旅費を流用して対応した.
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