研究課題
萌芽研究
CPPU処理したトレニアの花におけるホメオティック遺伝子の発現パターンを調べた。その結果、CPPU処理は、がく、花弁、雄ずい、心皮の基本的な4つの花器官におけるホメオティック遺伝子の発現パターンには影響を及ぼさなかった。しかし、CPPU処理によって発生する花弁の向軸側に発生する付属弁に関しては、興味深い結果が得られた。すなわち、花芽発達の比較的進んだステージでCPPU処理した場合に発生する細長い糸状の副花冠では、ホメオティック遺伝子の発現パターンがいわゆる雄ずい型になっているのに対して、花芽発達の比較的早いステージで処理した場合に発生する平板状の付属弁では、花弁型の発現パターンになっていた。糸状、平板状の副花冠とも、表面構造や着色で判断する限り花弁と同様の器官であるが、ホメオティック遺伝子の発現パターンから判断すると、糸状の付属弁では雄ずいのアイデンティティーを持っていることが明らかとなった。以上から、付属弁の形の制御に、ホメオティック遺伝子が密接に関わることが示唆された。一方、トレニアから単離されたこれらのホメオティック遺伝子が機能を持つ遺伝子であることを証明するために、RNAiコンストラクトを作成しトレニアに導入した。これらのノックダウン植物では、導入した遺伝子の種類によって花序の形態やがくへの着色、雄ずいの花糸の部分の花弁化など、表現形としては弱いものの、予想された通りの形態変化が現れ、これらの遺伝子がホメオティック遺伝子として機能を持つことが明らかとなった。さらに、CPPU処理により、花芽に少なくとも処理後1週間程度の期間にわたってサイトカイニンが蓄積することが明らかとなった。これにより、花芽分裂組織が著しく肥大し、本来退化するはずの雄ずいの托葉が付属弁に発達することが示唆された。これらの結果については、現在論文化を進めているところである。
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