研究概要 |
絶対寄生性の土壌病害菌であるアブラナ科根こぶ病菌のレース識別は、従来、検定植物への接種試験により行われていた。これを根こぶ病菌のレース識別を分子マーカーを用いて簡便に行う方法を確立するために、大、小サブユニットリボソームRNA遺伝子の塩基配列、IGS領域および本遺伝子中に発見されたイントロンの解析を行った。 1.IGS領域の解析:名古屋大学より分離されたNGY03株のIGS領域には14bpのパリンドローム配列の中心に反復配列が挿入されたものが、987-1248nt領域に5反復存在した。これら反復配列は、本菌のグループ分けの指標となる可能性が示唆された。 2.イントロンの解析:大、小サブユニットで発見された4つのイントロンの二次構造予測を行ったところ、Group-Iイントロンに特徴的であるstem-loop構造が見つかった。また、系統解析から、S516_NGYイントロンはGroup-Iイントロンのうちのsubgroup IEに、Pbr.S943_NGY、Pbr.S1506_NGYおよびPbr.1094_Hagiはsubgroup IC1に属することが示された。NGY03株を含む世界各地で分離された7種類の根こぶ病菌のPbr.S1506イントロンの塩基配列の比較により、米国産のArkansas(U19881)のものは、P5ドメインの配列の一部が欠損していることがわかった。さらに、NGY03とArkansas株のその領域の二次構造は異なっていることが推定された。萩市(Hagi)および広島市(Hiroshima)から分離された株で見つかったPbr.L1094イントロンは、HagiとHiroshima間でその長さおよび塩基配列が異なっていた。 NGY03株のエクソンおよび各イントロンの塩基配列は、クローン間で相同性が高かったのに対し、HagiおよびHiroshima株で見つかったPbr.S1904イントロンではクローン間で相同性が低く、この領域は地理的隔離株の識別に利用できる可能性が示唆された。一方で、Group-Iイントロンに特徴的なモチーフ配列(P,Q,R,S)は、すべての分離株の間で保存性が高かった。
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