研究課題
萌芽研究
本年度研究においては、既存抗菌剤の潜在活性をひきだす介助分子として見出したアリシンがアンホテリシンB(AmB)以外との組み合わせによって抗真菌活性を増幅しうるか否かについて検討した。その結果、アリシンが本来はグラム陰性細菌に対して選択的な抗菌活性を発揮するポリミキシンB(PMB)に潜在する抗真菌活性をも顕著に増幅する事実を認めた。アリシン+PMBによる協調的な抗真菌作用は、病原性酵母C.albicansおよびA.nigerやA.fumigatusなどの病原性糸状菌に対してより顕著であった。アリシン+PMB処理を施した出芽酵母細胞においては、細胞膜透過性の変化はほとんど認められないものの、先のアリシン+AmB処理細胞の場合と同様に液胞膜の著しい断片化が観察され、やはり真菌の液胞がこの種の介助型抗菌作用のターゲットとなっていることが明らかになった。一方、アリシン+AmB処理の場合と異なり、エルゴステロール処理した細胞においても、アリシン+PMBの作用が失われることはなく、アリシンによる増幅作用の発現機構は両抗生物質の場合で異なっているとみなされた。アリシン+PMBの協調作用の機構を明らかにすべく、アリシンが示す細胞膜リン脂質過酸化作用の関与について検討した。その結果、t-Butylhydroperoxide(t-BOOH)がアリシンと同様にPMBの作用を増強するとともに、PMBの細胞内透過を促進する事実を認めた。引き続き、PMBの抗真菌活性を増幅する介助因子の検索を行った。その結果、抗原虫剤として知られるサリノマイシンやモネンシンに期待する活性を見出すことができた。これらのイオノフォアー類がいかにしてPMBの活性を増幅しうるのか、現在検討中である。
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http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/biol/mchem/teacher.html