研究概要 |
出芽酵母(Saccharomyces cervisiae)の性フェロモンシグナル伝達系を利用したシロイヌナズナのGPCRの取得を目指した。FAR1,ScGPA1二重変異株にFus1-nphを導入し、さらにAtGPA1とコントロールとしてScGPA1を導入した。AtGPA1は酵母のGβγを抑えなかった。そこで、ScGPa1とAtGPA1のキメラを製作した。 ScGPA1のC末端側5,10,20アミノ酸残基をAtGPA1の配列で置換したchimeraA, chimeraB, chimeraCとAtGPA1のN末端側39アミノ酸残基をScGPA1のN末端43アミノ酸残基で置換したchimeraEを作成し、FAR1、ScGPA1二重変異、Fus1-nphを導入株に導入した。これらのchimera遺伝子を導入した変異株では、Gβγの活性を抑えることが出来た。 GPCRのスクリーニングには、より長くAtGPA1の配列を有するchimeraBを用いた。この形質転換酵母にシロイヌナズナcDNAライブラリーを導入し、リガンドとしていくつかの植物ホルモン、または植物からの抽出物を与えた条件で酵母を培養し、幾つかの遺伝子をクローニングした。これらの遺伝子の解析を進めている。 上述の実験に加えて、yeast two-hybrid systemを用いて、AtGPA1結合タンパク質の取得を試みた。野生型AtGPA1と変異を導入したAtGPA1QLを用いた。スクリーニングの結果、ATGPA1QLと相互作用するクローンとしてQL21を得た。QL21はキナーゼ領域を有し、データベース上ではMAPKKKファミリーに属していた。 GαとMAPKKKの相互作用は報告例がなく、新たなシグナル伝達様式を構成する可能性を示唆しており、興味深く、その機能の解明を継続中である。
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