研究概要 |
農薬の適正使用のため,現在,フェロモントラップが広く利用されている。しかしながら,フェロモントラップで捕獲された害虫の識別と計数を人力で行うなど,改善の余地は大きい。このため,本研究では,昆虫の感覚機能を利用した害虫識別のためのセンサーデバイスの開発を目的に実施した。本センサーデバイスは,メスの放出する性フェロモンを,オスの感覚機能(触角)を利用して電子的に検出することを企図している。平成18年度において得られた成果を以下に示す。 (1)北海道大学農場内に発生する農業害虫をフェロモントラップにより捕獲調査した。畑ではコナガ,ヨトウガ,ハスモンヨトウガの発生が確認された。 (2)北海道大学農場での発生数,体長,触角の大きさ(直径長さ)などの観点から,ヨトウガを研究対象に絞った。 (3)ヨトウガの捕獲を試みた。 (4)ヨトウガの累代飼育を行った(設備の構築と飼育方法の検討)。 (5)ガ類の場合,触角上の毛状感覚子に存在する気孔でフェロモンを受容すると言われている。ヨトウガの触角を電子顕微鏡で観察し,その気孔の有無の確認を行った。 (6)オスのヨトウガ成虫に対して,1)フェロモントラップで使用される人工合成性フェロモン,2)10頭のメスのフェロモン腺を切除して有機溶媒で抽出したフェロモン液,3)誘引行動を示すメスの生固体,の3種を使用して,オス成虫の行動を観察した。結果,2)に対して最も強い行動を示した。これは,オスが触角で感知したフェロモンの濃度が最も高かったためと考えられた。 (7)フェロモン濃度とオス成虫の行動との関係について,濃度の定義をどのように行うか検討した。(6)の2)で示したフェロモン液の作成方法を基準化することが,まず重要である。そして,空間に対するフェロモン量の基準化が必要であるとの結論に達した。
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