研究概要 |
研究代表者は「トリのグリオーマ」がA型トリ白血病ウイルス感染症であることを明らかにした。本研究課題ではトリのグリオーマ誘発ウイルス(FGV)を感染させた鶏でのRNA干渉(RNAi)の有効性を検討するためにこれまでin vitroでの効果を検討した。まず,分離されたFGVおよびFGV変異株の分子系統解析に基づき,これら分離株のenv遺伝子内に見出された共通な塩基配列を有する領域3カ所を標的とするsiRNAを作製した。今年度は昨年度までの成績を踏まえ鶏胎子線維芽細胞由来株化細胞DF-1を用いたより単純な実験系で,FGV感染または非感染DF-1に対し新たに4種類のsiRNAトランスフェクション試薬を用いてトランスフェクション効率を上げる条件およびin vitroでの遺伝子抑制効果を検討したが,いずれの条件でも充分な効果は得られなかった。一方,siRNA発現レトロウイルスベクターを用いた実験系を確立するために,遺伝子抑制作用が可視化できる蛍光タンパク質EGFP発現プラスミドを作製し,このプラスミドをDF-1細胞にトランスフェクションして恒常的にEGFPを発現する細胞の確立を検討した。レトロウイルスベクターについてはベクターの遺伝子にsiRNA発現領域を組み込む遺伝子カセットを準備した。本検索により,鶏の細胞でRNAiの有効性を検討することは現状ではきわめて難しいことがわかった。この理由として鶏では培養細胞の種類が少なく電気穿孔法や試薬導入法に使用可能な適切な細胞株が存在しないこと,主に哺乳類細胞用に調整されているトランスフェクション試薬の多くは鶏の細胞では有効ではないことがあげられる。
|